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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)2198号 決定

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人の上告趣意について。

所論は、結局第一審判決の事実誤認を主張するものと解されるから、明らかに刑訴四〇五条に当らないし、また、記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとも認められない。

弁護人飯沢進の上告趣意第一点について。

所論は、原判決が憲法三七条二項に違反しているとはいっているが、その実質は事実裁判所の裁量に属する証拠調の範囲、程度すなわち、刑訴三二一条一項三号の書面の供述者が所在不明のため第一審において弁護人並びに検察官の双方からこれが尋問を放棄し且つ原控訴審でもこれが尋問を請求しなかったにかかわらずその供述者を尋問しなかったことを非難するのであるから、明らかに刑訴四〇五条に当らない。

同第二点について。

しかし、溝脇きよ子の始末書は既に第一審裁判所に提出され、しかも、第一審はこれを判決の証拠として採用しなかったものであるから、同人のこれと異る内容の顛末書が新らたに上告審に提出されたからといって、被告人に対し無罪を言い渡し又は軽き罪を認むべき明らかな証拠をあらたに発見したとはいえないから、所論は刑訴四〇五条に当らないのは勿論同四一一条四号を適用すべき場合ともいえない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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